私たちの生活は、時に予想外の展開を見せます。

特に、長い労働生活を終え、ゆっくりとした年金生活に入るとき、多くの人が新たな現実に直面します。

このエッセイでは、そんな年金生活の中で見つける小さな幸せと、それがもたらす大きな喜びに焦点を当てています。

ユーモアを交えながら、私たちが日々直面する経済的な制約と、それにも負けずに見つけ出す生活の楽しみを描き出します。

エッセイの定義にはいくつかありますが、ここで紹介するエッセイは、限りなく実話。

つまりノンフィクションに近いものです。

「ラーメン一杯と江戸前にぎりで笑顔になれる？年金生活の小さな幸せ」

定年退職を迎え、長年の労働の後に訪れた年金生活。

しかし、待ちに待ったはずのこの時が、思っていたよりもずっと厳しいものだった。

毎月の食費をどうにか節約しようとするが、それでもなお、財布の中身は寂しくなる一方だ。

「今月は少し贅沢をして、外食でもどうかしら？」妻が提案するが、私の財布はまるで鉄のように固い。

しかし、美味しくてリーズナブルな店を見つけることは、そう簡単ではない。

「見つけたわよ！あの小さなレストランのラーメンセット、ラーメンと江戸前にぎりのセットが1250円だって！」妻が目を輝かせて言う。

店を決め、少しの贅沢を心に誓う。

しかし、計算してみると、一人一つずつのセットは予算オーバー。

結局、一つのセットを二人で分けることにした。




「こんな年金生活を送るなんて、想像だにしなかったわね」と妻が笑う。

かつてはレストランでコース料理を堪能していたが、今はこの小さな贅沢が精一杯。

それでも、一つのセットを分け合うことで、幸せな時間を感じることができる。

なつかしい駄菓子屋

ある日のこと、私たちは近所の公園で散歩をしていた。




そこで、昔ながらの駄菓子屋を見つけた。

子供の頃に戻ったような気持ちで店に入ると、懐かしいお菓子がずらりと並んでいる。

妻は目を輝かせ、「これ、覚えてる？」と言いながら、私の手にチョコレートの入った小さなビスケットを渡してくれた。

「これは…」と私が言葉を失っていると、妻は微笑みながら続ける。

「あなたが初めて私にプレゼントしてくれたお菓子よ。あの時も、こんなにシンプルなものだったけど、とても幸せだったわ。」

その言葉に心が温まり、私たちは駄菓子屋の前で、若かりし日の思い出に浸りながら、ビスケットを一緒に味わった。

それは、ラーメンにぎりセットと同じくらいの小さな贅沢だったが、私たちにとっては大きな喜びだった。

「さあ、食べましょう。これが私たちの小さな幸せなのだから」

年金だけでは豊かな生活は望めないかもしれない。

しかし、小さな贅沢を見つける喜びは、年を重ねるごとに大きな価値を持つようになる。

果たして、私たちの年金生活は、このラーメンとにぎりのセットで満腹を保てるのだろうか。

そして、それが私たちにとっての真の贅沢なのかもしれない。